顎関節症は自然に治る?放置すると危険な理由を解説
▼目次
1. 顎関節症とは?その原因と症状
2. 顎関節症は自然に治る?
3. 顎関節症を放置することで起こるリスクと早期治療の重要性
4. 顎関節症にならないための予防法
顎関節症は、顎の関節や周辺の筋肉に異常が生じ、痛みや違和感、口の開閉に問題を引き起こします。
放置すると症状が悪化し、日常生活にも支障が出てしまうことがあります。
今回は、顎関節症の原因やリスク、早期治療の重要性、そして予防策について詳しく解説します。
1. 顎関節症とは?その原因と症状
顎関節症とは、顎の関節や周囲の筋肉に異常が生じ、痛みや違和感を感じる状態のことを言います。
顎関節は、下顎と頭蓋骨をつなぐ関節であり、食事や会話など、日常生活で非常に重要な役割を果たしています。この部分にトラブルが起こると、生活に支障が起きることがあります。
顎関節症の症状
・顎を動かした際の痛みや違和感が生じる
・口を開ける際に「カクカク」という音がする
・口が開かない、または開きにくい
・顎、顔、首、肩の痛みやこり
・偏頭痛や耳鳴りが起きる
症状が軽度の場合、日常生活に大きな影響がないこともありますが、放置すると症状が悪化する可能性があるため、早めの対策が必要です。
顎関節症の原因
顎関節症の原因はさまざまで、以下のような負担がかかることが要因として考えられます。
➀ストレス
過度な緊張やストレスが顎の筋肉を硬直させ、顎の関節に負担をかけることがあります。
➁歯ぎしりや食いしばり
無意識に歯を強く噛みしめることで、顎の関節に過剰な圧力がかかり、負担をかけることがあります。
➂噛み合わせの異常
不正な噛み合わせや歯並びが、顎の関節に負担をかけることがあります。
➃外傷やケガ
顎に強い衝撃が加わることで、顎の関節や筋肉に負担をかけることがあります。
2. 顎関節症は自然に治る?
一時的な筋肉の緊張や過度の使用による軽度な炎症が原因であれば、安静にすることで自然に緩解するケースもあります。
特に、ストレスや疲労が原因の場合、十分な休息や生活習慣の改善により症状が和らぐことがあります。
しかし、自然治癒が期待できるのはあくまで軽度の症状に限られます。多くの場合、下顎が位置異常のまま動かすこと、あるいは歯ぎしりや食いしばりで関節や筋肉に負担がかかり、症状が長引いたり悪化したりすることが多いです。
原因が解決されていなければ症状は再発し、悪化する可能性があります。たとえ一時的に症状が落ち着いても、根本的な問題が残っている場合には、再び痛みや機能障害が現れることも多いため、歯科医院での診察と治療が推奨されます。
顎関節症が長期化した場合、痛みが軽減し開閉口などの運動範囲が正常時と同等になることもあります。この状態の治療介入に関しては歯科医師サイドでも意見が分かれるところです。
当院では
・日常生活が支障なく送れている
・歯や歯周組織に異常が出ていない
・顎顔面領域に審美性を損なうような歪みがない
場合は生体の適応変化が起きていると考え、治療介入をお勧めしないこともあります。
治療介入を必要とするか、否かの判断を的確にするためにも顎関節症でお悩みの場合は医療施設での検査をお勧めいたします。
3. 顎関節症を放置することで起こるリスクと早期治療の重要性
顎関節症は軽度の場合、放置していても一時的に症状が和らぐことがあります。しかし、症状を無視して放置すると、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。以下では、顎関節症を放置することで考えられるリスクと、早期治療の重要性について解説します。
放置することで起こるリスク
①痛みの慢性化
顎関節症を放置することで痛みが慢性化することがあります。症状が軽度でも、時間が経つにつれて痛みが強くなり、顎だけでなく首や肩、背中にまで広がることがあります。慢性的な痛みは日常生活に大きな支障をきたし、仕事や生活の質を低下させる可能性があります。
➁顎の機能障害
放置することで、口を開け閉めする動作が困難になる場合があります。最悪の場合、顎がロックされてしまい、開口障害(口が開かなくなる状態)になることがあります。この状態になると、食事や会話が困難となり、日常生活に深刻な影響を与えます。
➂偏頭痛や耳鳴り
顎関節症が進行すると、顎周辺の筋肉が緊張し、頭痛や偏頭痛、さらには耳鳴りが引き起こされることがあります。ただし、これらの症状は、顎関節症と直接的に結びつかない場合もあります。
④精神的ストレスの増加
顎の痛みや不快感が持続することで、日常生活が制限され、精神的なストレスが増加する可能性があります。特に、食事や会話が思うようにできないことによるイライラや、慢性的な痛みが続くことによる不安が強まることが考えられます。これがさらに顎関節症を悪化させる悪循環を引き起こすこともあります。
⑤骨格の変形
長期間に渡り顎関節が圧迫されている状態が続いていると下顎頭と言われる顎関節を構成する下顎骨の一部に病的吸収が起こり顎が曲がってきたり顔の左右非対称性が顕著になったりすることがあります。
早期治療の重要性
顎関節症を早期に治療することで、症状の悪化や再発を防ぐことが可能です。歯科医院での診察を受けることで、噛み合わせの調整や生活習慣の改善、場合によってはナイトガードの使用など、適切な治療法が提案されます。特に、全体でバランスよく噛める環境作りは、顎関節症のリスクを軽減するために非常に重要です。
早期の治療を受けることで、痛みや違和感の解消が期待でき、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。また、治療を始める時期が早ければ早いほど、治療期間が短縮されることが多く、症状が進行する前に適切な対応が可能です。
4. 顎関節症にならないための予防法
顎関節症は、多くの場合、生活習慣やストレスが影響しています。発症を防ぐためには、日頃から顎やその周囲の筋肉に負担をかけないようにすることが重要です。ここでは、顎関節症を予防するためのポイントを解説します。
①ストレス管理
ストレスは、顎関節症の発症や悪化に大きく関わっています。特に、ストレスによって無意識に歯ぎしりや食いしばりをすることが多く、それが顎関節に負担をかけます。ストレスを適切に発散することで、顎関節症のリスクを減らすことができます。
②噛み合わせの管理
噛み合わせが悪いと、顎関節やその周囲の筋肉に余分な負担がかかります。
不正咬合や歯並びが気になる場合は、歯科医院でのチェックを受け、早めに治療を行うことが重要です。また、片側だけで噛まずに、両側でバランスよく噛むように意識することも重要です。
そして食事の際には、柔らかめの食べ物を選ぶか、ゆっくりと噛むことを心がけましょう。
③歯ぎしりや食いしばり
歯ぎしりや食いしばりは、顎関節症の大きな原因の一つです。対策することで顎関節への負担を軽減できます。夜間に歯ぎしりをする場合は、歯科医院でナイトガード(マウスピース)を使用することが推奨されます。また、日中に上下の歯が当たっていることをTCH(Tooth Contacting Habit)といい、TCHが顎関節に悪影響を及ぼすことも近年の研究で言及されています。鼻から息を吸い口から吐いて唇を閉じると上下の歯は接触しない状態で過ごすことが出来ます。
④定期的な歯科検診を受ける
顎関節症は、早期に発見し治療を行うことで進行を防ぐことができます。定期的に歯科検診を受けることで、顎の異常や噛み合わせの問題を早期に見つけることができ、適切な治療が可能です。
まとめ
顎関節症は、多くの場合、適切な治療が必要です。放置すると痛みが慢性化してしまい、顎の機能障害、頭痛や耳鳴りなど、さらなる健康リスクを招く可能性があります。治療法にはナイトガード、噛み合わせの調整、歯列矯正、被せ物、ボトックス注射など多くの選択肢があります。
顎関節症を予防するためには、ストレス管理、バランスの取れた噛み方を意識することが重要です。
また、歯ぎしりや食いしばりの習慣を改善し、ナイトガードを使用することも有効です。
関歯科診療所では、顎関節症の診断、治療を行っています。顎の痛みや違和感がある方はご相談ください。
監修
関歯科診療所
院長 関 豊成